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逢魔が時
学童のお迎え終了時間まであと五分--。
空が紅く染まった夕暮れ時。
太陽が沈むのを横目に、線路沿いの一方通行を自転車で逆走する。
見通しの良い一本道は狭く、車通りがほとんどない。
ガタン、ゴトン……。
駅から発車した電車が後方から追い抜いて行った。
満員電車。疲れた顔で手すりに掴まっている人が窓越しに大勢見える。
並走しながら、ふと目に入った車両のボディに描かれた赤い文字は--。
『回送』
「……えっ?」
加速していく電車を見送る一方で。
自転車で走る速度を緩める。
すると--。
正面からクルマのライトが照らしつけた。
……危ない、あぶない。
危うく電車の乗客と同じところへ逝くところだった……。
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