第1章

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「あなたにとってはとてーも素敵な芸術鑑賞なんでしょうけど、あたしから見たら、何の価値もない!!」    「僕はマリ、、、、、、」 尚も話を続けようとするので、追い打ちをかける。  「あっのー!!」 あたしの声、やっぱり大きくなる。  「はい?」  「ですからっっっ、、、」 もうっ!! そう思ってあたしは颯野さんを 腰から蹴り飛ばした!!  「うわぁ!!すごく食い込んできますねー、あなた!!」    はぁ?っと思ったら、あたし、ちょっと待って、どうしよう、、、あたし、この人と腰倒し状態。。。この人の上にあたしが乗っかってて、この人は尻もち状態で寝転がっているんだ。  「颯野ー!」 どこかで誰かが呼んでいる。  「すっ、、、すみません、、、ごめんなさいでは、 済まないですよね。今度、お食事代でも払いますから。」  「いいです。そういうのは、いいですから。」  あたしが退くと、颯野さんは床に手をついて立ち上がった。  「大体、そういう芸術鑑賞いわく、芸術っっぽいことは、家でやって下さいません?」  「ここ、僕の家ですけど。」  「そうじゃ、なくって!! もっと部屋はないんですか、部屋は!!!」 「あなた、人の家の部屋に何を期待しているんですか!! 木漏れ日の階段ならありますよ、でも夏が暑くてー!」  「まだ夏ではありません。絶好の春日和ですが、何か???」  そう、瀬衣香のこの言葉からも分かるように、時は今、まだ5月だ。初夏になるにも、あと1ヵ月は早い。  それにしても、せっかく来たので、何か本を借りていこうと思った。  そこであたしは、「バスケへの依頼.50の秘訣」という本を取ってきた。中を見開いてみる。 クォーター(試合回数の名称)だの試合に向けての強化法だの、オフィシャル・タイマーの計り方など、細かくびっしりと書きつけてある。  なるほどー。 それを手に、あたしは考えた。これは借りよう、と思い、貸出カウンターの横にいた颯野さんに声をかける。  「うっわー。いいんですか?僕、こういうの、大好きなんですよね。ありがとうございます。」  そう言って、颯野さんは何か紙袋を受け取っていた。  「じゃあ。」 そう言って、渡し手の女の子は帰って行った。  「いやぁ、、、。頂いちゃったなー。また今回も返さなきゃなぁー。」  ひょっとして、今の、彼女さん? すれ違う時、ちらりと見た。  
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