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「この子、颯野の彼女とかじゃないよね?」
春風さんがいきなりあたしを顎で指さして言う。
「うーん。彼女、とかではないんだよね。」
颯野さんが答えている。
しっかし、いつ見ても綺麗だなー。あの潤んだ瞳といい、ファッションといい、、、。
あたしはつい、春風さんを見てしまっていた。
「あたしね、そんでもって颯野の彼女なの。
いつか颯野早音になれたらなー、なんてなー,
」
「あのー、何、勝手に決めているんですか
。僕には、彼女はいません。」颯野さんが答える。
「えー。あたしと付き合ってるんだよー。
ふざけないでよ、だから今日も本、借りに来てやったのにー、こんな本、誰が読むのよ、誰が呼んでもつまんないわよ、こんな本。」
「そんなことない!!」あたしも負けじと言い返す。
「これは家宝よ。あなたには分からないかもしれないけどね、これは家宝なの。颯野さんにとっては全て大切。颯野さんは、颯野さんは、決して本のことを馬鹿にしたりなんかはしない。けなすようなこともない。颯野さんは美術作品にも凝っていてちゃんと目を通す人だし、何より本を大切に扱っている。分かっていないのはあなたよ。颯野さんの大切な家宝、無駄にするようなこと、しないでよっ!!」
あたしはそう言うと、さっさとランドセルを手に取り、足早に古書店を後にした。
~*幸せとは何か.2*~
6月1日。もう授業全てが終わろうとしている。うちの部は火、水、金制なので、今日みたいな月曜日は部活がない。
「瀬ー川っ!!!」 「わぁ、涼也ー!!!どうしたの?何かある?」
「わりぃ。この後、話、ある。残ってろよ。」
「え?何?う、うん。」 この後に起こりうる出来事が、この先のあたしの事態を悪くすることになるなんて、今この時のあたしは全然、気づいていなかった。
キーン、コーン。学校終わりのチャイムが鳴る。帰りのHR(ホームルーム)も終わってしまったし、あとは涼也を待つだけなんだけど。
絢永涼也(あやなが・りょうや)。同じ学校、同級生。最近、というか、つい何ヵ月か前、永瀬京(ながせ・きょう)という芸名で、スプラッシュ・ライダーという人気アニメドラマに出演し、俳優デビューした。
同じ学校で同級生、同じクラス、っていうのはなんだか誇れる。誇りが高い。
そろそろかな、と思った。その約10分後。
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