第1章

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あたし達が走らされて走るのは6分間。オフィシャルというタイマーを設定して、徹底して計られながら体育館を何周でも走り回らされる。   4年(小4)で最初、仮入部で入ってくるコ達は初め、みんな先輩に追いつけずにのろのろと走っていることもある。  そんな最中、田波先生はそれでも追い打ちをかけるように声を出せー、ちゃんとみんな先輩について行けー、と言う先生だ。   その噂の程は分からないが、女好き、という噂まである。噂というのは巡り巡るから大変だ。 あたしは今日も走る。走って走って走りまくる。  その後でフットワーク(ウォーミング・アップ)がある。本当の練習が始まるのは、何と言ってもそこからなのだ。今日も小学生にしてはハードな練習を終え、くたくただった。 みんなでぜいはぁしていた。終わった。 あっ、そうだ、水菜にノート借りに行かなきゃ!! そう思って水菜のいる吹部の音楽室へと向かった。 行ってみると、ちょうど部活が終わった後のようで、水菜がちょうどフルートを入れたバッグとランドセルを手に、立ち上がろうとしゃがみ込んでいるところだった。 「ごめん、水菜、遅くなった。田波先生、最後まで練習に手、込めてるからさぁー。」 「いいよいいよ、うちの顧問の安田先生もめちゃくちゃ手、込めてるよ?時間ギリギリまでめっちゃ精一杯、行くぞー、って感じでさぁー。」  「似てる、ね、イェイ!!」 最後は2人で声を揃えてハイタッチした。 「あ、そうだ、水菜、ノート、貸して。」 「うん。おけい(ok)。ノート、ノート。」 そう言いながら、 ランドセルに手を突っ込んでガサ入れしてる 。 「あ、あった!」そう言って彼女はノートを差し出す。「はい。字の綺麗さはピカイチあたしが愛情込めてやってんだから綺麗な使い方してよね!!」 「ありがと。本当、今日はごめんね、水菜。」 「いいよ、大丈夫だよ、それよりはやく帰ろっ!」 「うん、じゃあね、水菜、バイバーイ。」 「じゃあねーっ!!」 そう言ってあたし達はバラバラに散って帰った。 あっ、そうだ! あたし、古書屋行くの、忘れてた!!今から行けば門限の6時を超える。 それでもいい。怒られるのを覚悟で行けばいい。そう思ったあたしは足早に古書店へと向かった。   ~*幸せへのメモリー.1~*  その扉は、開くとギギギ、と音がした。
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