12年後

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 その夜ずっと考えた。  何を? それは小暮店長が言っていたこと、そして賢人のこと。そうしたらすごく良い案が浮かんだのだ!  あと3週間でバレンタインデーなのだ!  バレンタインデーはチャンスだ。  ワタシの洋菓子への情熱を表現するミラクルチャンス。  そして何を隠そう、女の子から告白していい日なのだ。    これはダブルで素敵なイベントだ。    あ、LINEが着信した! 里奈ちゃんだ。 『報告! 高校合格したよ!』 『やったー 里奈ちゃん、おめでとう』  スタンプを3つ送る。 『小雪はパティシエはどう?』 『うん すごく楽しいよ。店長さんいい人だよ』 『ところで、バレンタインに、あのおじさんにチョコをあげるの?』  おじさん、賢人のことだ。アタシはちょこっと意固地になっちゃう。 『あげるよ』 『感謝チョコ?』 『半分は感謝』焦っているスタンプを送る。 『ウチは推薦うかったからいいけど、ショウマ君は2次だからさ、バレンタインはやめたほうがいいよね?』  ショウマ君はクラスメイト。里奈ちゃんはずっと告白のチャンスをうかがっていた。 『ショウマ君、チョコもらったら100万馬力で合格かもよ!』 『そだねー。がんばろう。サンキュ。小雪』  お互いおやすみなさいのスタンプを送りあった。  スマホの電源を消してから、さっき嘘をついたことを考えて涙が出る。  賢人、ごめんなさい。本当は本命チョコです。  アタシは小さい頃から、賢人が好きです。ママとの約束でこんな成り行きになっているから、賢人はアタシに優しいんだよね?  賢人に気持ちを分かってもらうために、今回は一世一代の、チョコを作ります!  アタシは雪女のプライドにかけてそう誓った。
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