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「いいんだよ。小雪ちゃんのせいじゃないから。それにしても、さっきまでは正常に動いていたのになあ」
店長はそう言ってオーブンをチェックしている。
アタシはそれ以来、オーブンには手を触れないようにしている。
今回のチョコの湯煎も全く自信がなかった。
問題は湯煎ということだ。ボウルに50度前後のお湯をいれて、
チョコを溶かすのだが、アタシがボウルを持つと、お湯が一気に冷めてしまう。
「あーん。ダメ、冷えちゃダメ」
いってもいうこときいてくれない。
たとえ沸騰したお湯を使おうと、一瞬で温度が低くなる。チョコは取り扱いが難しいのだ。上がったり下がったりそんなサウナみたいな湯煎では、気持ちよく溶けてくれない。
「えー? やっぱり無理? どうすりゃいいの?」
ズボンのポケットの携帯が鳴動した。
取り出してみると、賢人からだ。
「ごめん。今日は迎えは原田くんに頼んだ」
と出ている。
えーーーーーー。
ショック。ダブルショック。
なんで? ひどい。賢人ひどいよ。神様ひどいよ。
チョコもうまくいかないし。それに、お迎えも原田が来るなんて
。
アタシは涙が出てきた。カチカチのチョコをひとかけら口に入れる。
涙の味がしてしょっぱかった。
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