5人が本棚に入れています
本棚に追加
「わかった。ちょっと待っててね」
アタシはコンビニに入ると、いつのアイス売り場にはいかずに、酒類コーナーに向かう
コンビニのお酒は缶ビールとか缶チューハイが多くて、大吟醸は見当たらない。なんとなく高そうな日本酒の小さな瓶を持ってレジにいくと
レジの男の人はじろじろとアタシのことを見て
「未成年にはお酒は販売できません」だって。
がっかり。アタシは何も買わずに、いや買えずに車に戻った。
原田さんは車のなかで、よだれを垂らしてうたたねしていた。はっと起きて
「あ、すいません。小雪さん、遅かったすね」とほざいている。
アタシはコンビニでかなりの時間を費やしたらしい。それより困った。お酒。どうしよう
「小雪さん、ぼくの晩酌用の焼酎は?」
という原田の言葉は聞こえないふりをする。
テンパリングをしないで、作るチョコを試してみる。
いわゆる生チョコだ。
チョコはできるだけ細かく刻み、鍋で暖めた生クリームにそのチョコを入れて溶かせばよい。ガスコンロの火は小雪の冷力で弱くなるが、口をきっちりマスクしておけば、火は消えることはなかった。生チョコはなんとかできるぞ。
しかしアタシはそれでは不満だ。
賢人の好きなアルコールを隠し味にいれたい。洋菓子店なので、オレンジキュラソーだのラムだの洋酒がある。
それを使わせてもらって作ったが、美味しいけど、それだけなのだ。パンチに欠ける、というか、ノーマルすぎる、というか。
自分は雪女なのだから、と思う。
だから、アタシにしかできないチョコを作る! そう決心をする。
最初のコメントを投稿しよう!