12年後

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「わかった。ちょっと待っててね」  アタシはコンビニに入ると、いつのアイス売り場にはいかずに、酒類コーナーに向かう  コンビニのお酒は缶ビールとか缶チューハイが多くて、大吟醸は見当たらない。なんとなく高そうな日本酒の小さな瓶を持ってレジにいくと  レジの男の人はじろじろとアタシのことを見て 「未成年にはお酒は販売できません」だって。  がっかり。アタシは何も買わずに、いや買えずに車に戻った。  原田さんは車のなかで、よだれを垂らしてうたたねしていた。はっと起きて 「あ、すいません。小雪さん、遅かったすね」とほざいている。   アタシはコンビニでかなりの時間を費やしたらしい。それより困った。お酒。どうしよう 「小雪さん、ぼくの晩酌用の焼酎は?」  という原田の言葉は聞こえないふりをする。  テンパリングをしないで、作るチョコを試してみる。  いわゆる生チョコだ。  チョコはできるだけ細かく刻み、鍋で暖めた生クリームにそのチョコを入れて溶かせばよい。ガスコンロの火は小雪の冷力で弱くなるが、口をきっちりマスクしておけば、火は消えることはなかった。生チョコはなんとかできるぞ。  しかしアタシはそれでは不満だ。  賢人の好きなアルコールを隠し味にいれたい。洋菓子店なので、オレンジキュラソーだのラムだの洋酒がある。  それを使わせてもらって作ったが、美味しいけど、それだけなのだ。パンチに欠ける、というか、ノーマルすぎる、というか。  自分は雪女なのだから、と思う。  だから、アタシにしかできないチョコを作る! そう決心をする。
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