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2月13日の朝、ぎりぎりに良いことを思いついた。
朝出かけるときに、祖母に
「おばあちゃん、今日は賢人の家でゲームする。泊まるね」
「そうなの? 小雪、むこうのご両親にお店でなにか買っていきなさい」
「うん、そうする」
そういう会話をして家を出る。
おばあちゃんは賢人について信用しきっている。これまでも何度かそういって泊まるといって大丈夫だった。
お店はこの日はすごい混雑だった。
女の子が一杯来てくれた。アタシのつくった生チョコも見本として少し並んだ。
売るのはまだ無理だけど。アキさんがきれいにラッピングしてくれて、サンプルに飾ってくれた! この日あたしは、こまねずみのように働いた。
そして、店主には「今日はお友達の里奈ちゃんちゃんちにいくんです」
とアリバイを作って退勤する。
これも嘘だった。賢人にも同じようにLINEをした。
「今日はお迎えはいりません。里奈ちゃんちに泊まります」
アタシが向かったのはママのところだ。みるみるうちに雪が降ってきた。
ママがアタシの為に風と雪を隠れ蓑にしてくれている。
吹雪の中を空を飛ぶ雪女なんて、人が見たらたいへんなことになるから。
氷の御殿にママはいた。
「ママ!」
「小雪、どうしたの、急にこっちの世界にくるなんて。まさか、賢人が浮気でも」
「違うよママ、あのね、今日はお願いがあってきたの」
「へえ、お前がそんなこというなんて初めてだ」
「ママ、アタシ、光輝酒がほしい。賢人に飲ませたいの」
「光輝酒だって、あれは妖怪界の命の源。おまえなんでそんなことを」
「だって、ママ、人間はさ、常に少しずつ老化しているんだよ。あたしが、追いかけても追いかけても賢人は先にいってしまう。アタシが、その、本店の真理恵さんみたいに女らしくなるまで、賢人に元気でいてほしいの」
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