12年後

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「ママ、でもさ、カネゴンはさ、まだあたしを子どもだと思っているから」 「ああ、そう! あいつね、あんなにへっぴり腰だったとは」とママは落胆した様子だった。  ママはワタシが保育園にはいるころ、賢人にあたしが大きくなったら、結婚するように言いくるめたらしい。 「あの男は、小雪を可愛いと思っている様子だったから、適役と思っていたのに」  とアタシの顔をまじまじとみる。 「それにしても、小雪は成長が遅いねえ。まるで人間なみだ。普通の雪女は7,8年で孕むことができるというのに」 「え、そうか、いや、だって仕方ないよ」  あたしはなんとなく、胸を張ってみた。ブラはまだつけてない。 「小雪、そのパチシエとやらになるのは、何歳になったらだね」 「うん。中学卒業してからで、それから、洋菓子店で修業をさせてもらって、理想では20歳でなれればいいな」 「そうか……」  となんだか寂しい顔をする。 「ママ、ごめん。でも、アタシ人間界も好きなんだ。だからまだね、そっちの世界に戻れそうもないと思う」 「そうだね」  とママは泣き笑いみたいな顔になる。  ママは好きだけど、ママの望むようにするのがベストなんだとは思うけど。  でも、その時ワタシは将来の夢をどうしても捨てられなかった。
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