12年後

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「店長、ありがとうございます。中卒のアタシをやとってくれて」 「いいや助かっているよ。ぼくのところは夫婦2人の経営で、人を雇うのも考えていたんだけど、ね。田舎だからな。ここは。人選が難しくて。そいえば小雪ちゃんが職場体験で初めてきた時のことを思い出すよ。試しにやってみるかいって、絶対に出来ないと思ってたら、あっという間にメレンゲを作ったよね」 「はい!」  だってアタシの腕はその気になれば吹雪にだって起こせるんだもの。メレンゲなんて簡単すぎるよね。 「ああ、この子は素質があるな、と思った」 「そうよね」  と店長の奥さんのアキさんが言った。  アキさんは優しくて、でもちょっと厳しいけど、アタシのことを自分の妹みたいに可愛がってくれる。 「小雪ちゃんはガッツがあるって、それからずっとウチのが言っていた。だから、卒業して、ここに来てくれて本当によかった」 「本当ですか?」 「本当だとも。でもお給料はあんまりあげられないんだよね。だからちょっと申し訳ないな」 「いいえ、お給料はいいんです」  お金でほしいものとかはなかった。おばあちゃんに食費をあげられれば十分だし。  アタシは高校進学の気持ちは全くなかったんだ。  そう告げると賢人は、「そうなの?」 と、少し考えているようだったけど  本当の話、学力的に無理だろうと思っていたんじゃないかな。  それに夏場は登校できないことが多かったしね。
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