12年後

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 学校には、低体温プラス特殊な体質と、暑さへの抵抗力が極端に低いということで、わかってもらっていたけど。実は小学生の時、危ない年があった。  歴代の猛暑の記録ナンバー1のあの年は、ものすごい暑さだったんだ。  山岳地方のここは高地にいけば、なんとかやり過ごす事ができるのだけど、あの時はつらかったな。ママのところに一時避難したりして。  結局2学期はその後遺症でほとんど登校できず、留年して、小学4年を2度しちゃった。恥ずかしいけど。  その年は賢人、アタシのことを世話してくれて。本当に自分のことはそっちのけだった  休みのたびに車を駆ってアタシを寒い場所に連れていった。 「小雪ちゃん、お給料が安いから、それのお詫びってわけではないけどね」小暮さんが嬉しそうに言う。 「はい?」 「仕事は6時までとなっているだろう? だけど、おじさんが迎えにくるまで、1,2時間あるから、その時間は小雪ちゃん、お菓子作りの練習してもいいよ!」 「いいんですか?」 「うん。小雪ちゃんには技術を磨いてもらってさ、いつかは、この店に新しい商品を作ってもらいたいんだ」 「ありがとうございます! やった!」  踊りたくなるほど嬉しかった。 「ほら、だから、今日ははもう洗い物を終わりにして支度しなさい。水曜日はおじさんのお迎えが早いだろう?」  アタシは時計を見た。時間がたつのが早い。  確かに賢人がもうすぐ車で迎えに来てくれる頃だ。 「すみません。明日から何を作るか、アイデア考えてきます」
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