初めての…

2/2
前へ
/2ページ
次へ
「スバルー!このホットドッグ?とかいうの、美味しいなぁ」 「うん。口の周りにケチャップ付いてるぞ」 満面の笑みで美味しそうにホットドッグを頬張るエミリアは、口の周りにたくさんケチャップを付けたまま、きょとんと俺を見た。 「ったく、仕方ないな」 そう言いながら、鞄から取り出したポケットティッシュを彼女に差し出す。 彼女?でいいのだろうか。 実は、目の前にいるこいつ、エミリアには性別がないらしい。 ーーー30分前。 いつも通りの学校の帰り道。帰路の途中にある橋の下に見慣れないものを見つけた。 「なんだあれ?」 近付いてみると軽自動車のように見えるが、どこかにぶつけたのか前方がかなり凹んでいた。 運転席には女の子が眠っている。…ん?いや、衝突の衝撃で気を失っているのだろうか?だとしたら大変だ。あまり関わりたくはないが、声を掛けることにした。 「あの、大丈夫ですか?」 フロントガラスをノックし、大きめの声で話し掛けると、彼女はゆっくりと目を開いた。 「あれ?ここは…?あ、そっか。心配してくれてありがとう。大丈夫だ。私はエミリア。火星から来た。君は?」 「あ、俺はスバル。…って、えっ!?火星から来たって、えっ!?」 え。なんだ?この子、不思議ちゃんか?声を掛けたことを少し後悔した。 「ん?君もしかして、火星人に会うのは初めて?」 火星人だと言い張るのか。もうなんでもいいや。付き合ってやるか、暇だし。 「当たり前だろっ。意味分かんねぇ。てか、火星人がここに何の用だよ」 「地球の調査と留学に来た。最近親の調子が悪くてな、どうにかできないものかと思ってな」 「そうか。じゃあ、医学を学びに来たのか?」 「いや、植物学だ。私たち火星人は、地球で言うところの植物みたいな存在なんだ。だから、性別もない」 「マジかよ」 「ところで、お腹が空いているのだが、何か食べ物はないだろうか」 軽自動車から降りながら、エミリアは少し恥ずかしそうにそう言った。 俺は近くのパン屋でホットドッグを買ってやり、今に至る。 ティッシュで口を拭ったエミリアが、また満面の笑みを俺に向ける。 「スバル、これからよろしくな!」 これから俺に、どんな毎日が待ち受けているのだろうか。
/2ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加