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「スバルー!このホットドッグ?とかいうの、美味しいなぁ」
「うん。口の周りにケチャップ付いてるぞ」
満面の笑みで美味しそうにホットドッグを頬張るエミリアは、口の周りにたくさんケチャップを付けたまま、きょとんと俺を見た。
「ったく、仕方ないな」
そう言いながら、鞄から取り出したポケットティッシュを彼女に差し出す。
彼女?でいいのだろうか。
実は、目の前にいるこいつ、エミリアには性別がないらしい。
ーーー30分前。
いつも通りの学校の帰り道。帰路の途中にある橋の下に見慣れないものを見つけた。
「なんだあれ?」
近付いてみると軽自動車のように見えるが、どこかにぶつけたのか前方がかなり凹んでいた。
運転席には女の子が眠っている。…ん?いや、衝突の衝撃で気を失っているのだろうか?だとしたら大変だ。あまり関わりたくはないが、声を掛けることにした。
「あの、大丈夫ですか?」
フロントガラスをノックし、大きめの声で話し掛けると、彼女はゆっくりと目を開いた。
「あれ?ここは…?あ、そっか。心配してくれてありがとう。大丈夫だ。私はエミリア。火星から来た。君は?」
「あ、俺はスバル。…って、えっ!?火星から来たって、えっ!?」
え。なんだ?この子、不思議ちゃんか?声を掛けたことを少し後悔した。
「ん?君もしかして、火星人に会うのは初めて?」
火星人だと言い張るのか。もうなんでもいいや。付き合ってやるか、暇だし。
「当たり前だろっ。意味分かんねぇ。てか、火星人がここに何の用だよ」
「地球の調査と留学に来た。最近親の調子が悪くてな、どうにかできないものかと思ってな」
「そうか。じゃあ、医学を学びに来たのか?」
「いや、植物学だ。私たち火星人は、地球で言うところの植物みたいな存在なんだ。だから、性別もない」
「マジかよ」
「ところで、お腹が空いているのだが、何か食べ物はないだろうか」
軽自動車から降りながら、エミリアは少し恥ずかしそうにそう言った。
俺は近くのパン屋でホットドッグを買ってやり、今に至る。
ティッシュで口を拭ったエミリアが、また満面の笑みを俺に向ける。
「スバル、これからよろしくな!」
これから俺に、どんな毎日が待ち受けているのだろうか。
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