機動宅配セヴン・トゥエルヴ

健康をお届け！ヤークルトレイディ。

にわかに宅配サービスが激化している中、異色を放っているのが健康飲料を専門に取り扱っている業者「ヤークルト」だ。

実は、宅配サービスの歴史が長くコンビニ宅配サービスが始まる30年も前から続いている、いわば元祖宅配サービスだ。

宅配員に女性を多く雇用しているため彼女らのことは敬意を込めてこう呼ばれる
…“レイディ”と。

ここは宅配マシン乗りの集まる喫茶店。

毎日がハードワークの宅配マシン乗りには嬉しい大盛りメニューが人気の店だ。

「おやおや、最近めっきりテリトリーが狭くなったとお噂のセヴン・トゥエルヴさんじゃありませんか」

「お前はLOWS連合の…」

「今日もショボイお荷物をお届けしてきたんですかぁ？」

「なんだと！？」

「まぁまぁ、アナタ達仲良くしなさいな」

「レディさん、でも…」

「うるせぇ、引っ込んでろ”オバサン“」

レディさんの眉が僅かに動いた。

その時、3人同時に宅配依頼が入った。

オペレーター
「宅配依頼です！場所は岬にある老人ホーム、依頼品を最寄りの店舗で回収して向かってください」

「了解、急行します」

オペレーター
「なお、途中に事故車両があるとのことです。十分注意されたし。」

「なんだよ、お前ぇも、岬の老人ホームかよ」

「あら偶然ね、私もよ」

「じゃあ、誰が一番に届けられるか勝負と行こうじゃないか」

「安全確実に依頼品を届けるのがモットーだ」

「ケッ、ノリが悪いな」

「いいわね、乗ったわ！」

「レイディさん！？」

「おいおい、俺たちのマシンと、そっちの50ccバイクじゃ勝負にならないだろう？」

「あら、降りるの？口ばっかりね」

「なんだと！？」

機動宅配に使われる車両は、専用に開発された特殊車両で軽自動車の半分ほどの車幅で1000ccのエンジンを積んだ、いわば屋根付きのリッターバイクである。
小型、軽量の車体にハイパワーエンジンを積んだ加速力と小回りに特化した車両だ。

対して、ヤークルトレイディのマシンは排気量50cc、後ろの車輪が2つある三輪バイク。

若者が主力の機動宅配員に比べ、ヤークルトレイディは既婚女性の比率が多く、しかも彼女はそれほど体格に恵まれているようにも見えない。

勝負にならないと誰もが思っていた。