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「じゃぁな、岬のホームで待ってるぜ!」
勢いよく加速していくLOWS連合の宅配員のマシン。
「レイディさん、宅配品を良ければ一緒に届けましょうか?」
「私は私のペースで行くわ。気をつけてね。」
岬の老人ホームは曲がりくねった海岸線の道路の先にある。
もう一本のルートもあるが、反対側の海岸線に出てからになるので、かなりの大回りルートになる。
岬の老人ホームが目と鼻の先というところまで来たところで事故は起きていた。
「あっちゃぁ、事故ってこれかよ」
「見事に道を塞いでるなぁ」
海岸線の急カーブには横転したトラック。
長い車体が反対車線まではみ出ていて、如何に車幅が乗用車の半分程度しかない宅配マシンとはいえ通行はできない。
内側に僅かな隙間があるとはいえ、すり抜けは出来そうもない。
横転したトラックの手前で停止する宅配マシン。
「やれやれ、これでは迂回するしかなさそうだな」
そこへ一台のバイクが減速なしで突っ込んでくる。
白い車体の三輪、ヤークルトバイクだ。
「この隙間を抜ける気か!?」
「無茶だ!」
「ぶつかる!」
それでもスピードを緩めないヤークルトバイク。
あわやぶつかると思った刹那。
「ヤークルトバイクが3輪なのは伊達じゃないのよぉぉぉ!」
ありえない軌道を描いて、わずかな隙間をすり抜けていくバイク。
「な、なんだありゃあ・・・」
あっけに取られる他の宅配業者。
一瞬、呆けたあとに誰かが言った。
「そうか、ヤークルトバイクは小型で後輪が三輪だからあんな軌道を描けるのか…」
「おまけに小柄な女性だからこそ、あの隙間を抜けれる。」
「流石に人生の荒波を超えてきた百戦錬磨ってところだな」
「まぁ、俺らは迂回するしかなさそうだな」
結局、海岸線の道路を引き返し迂回して、ギリギリ宅配時間には間に合った。
「あら、ずいぶんと遅かったんじゃない?」
「うるせえオバサン」
「依頼品も迅速に届けられないボウヤがいうセリフじゃないわね。」
「ぐ…」
「私らだって健康をお届けするのにプライドもってるのよ」
黙り込む宅配業者。
「それにね、女性を“オバサン”なんて呼ぶもんじゃないわよ」
「ちゃんと“レイディ”って呼びなさいね」
いやはや、パワフルな“レイディ”が居たものである。
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