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「よっちゃんね、気分に波があるんだよね。今日はすごくテンション高かったみたい」  よっちゃんとは鬼塚のことだ。下の名を、夜、というのだ。 「二人で遊びに行った時はあんなんじゃなったぞ」 「それは会って間も頃だったからだと思うよ。誰でもそんなもんだよ」 「アイツ、俺らのこと邪魔してる気がする」 「よっちゃんはそんなことしないよ」  天堂は首を振って否定した。  だが月森は疑心を募らせる。彼のなかで、鬼塚が得体の知れないものになっているのであった。  その晩、月森のもとに天堂からメールがあった。 《よっちゃんがベランダから部屋に入ってきたの。びっくりした》  どういうことだよと返信する。  しばしメールが交わされた。  まとめるとこうだ。  まず天堂家と鬼塚家はマンションの隣同士の部屋である。無理をすれば隣のベランダに飛び移ることもできる造りになっている。鬼塚は飛び移ったのだ。そうして不躾に天堂の部屋に侵入してきた。  鬼塚は友人が尋ねる気軽さであったらしい。手土産にみかんまで持ってきた。遠慮を知らない幼い少年のように天堂と話すだけで話して、それから引き上げた。 《よっちゃんっていつもこんななんだよね》  月森はどう返すべきなのか困った。 《明後日のデート楽しみだね》  つづけてそう送られてきて、一人こくこく頷くのであった。  翌日、天堂と二人で下校していたら、鬼塚が背後から話かけてきた。 「双眼鏡貸して」  白い手を差し出してくる。
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