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池田屋事件 前篇(Blaze versus Blades) 新撰組
新撰組は、京の治安を守る為に組織された、江戸幕府は京都守護職に用いられた剣客組織である。
ことあらば刀を抜いて不逞浪士を斬った、という印象を持たれていることもあるが、主な任務は捕縛である。
斬り殺した人数で言えば、不逞浪士よりも、粛清された身内の方が記録に多い。
当初の彼らは、京の人々から恐れられたと言うよりも、田舎から上がって来た浪人同然の蛮人の様に受け止められていた。
王城の人々の目は、士道の下で剣に生きる者達に冷たく注がれた。京には長州などの反幕府主義者に同情的な素地もあったから、尚更と言える。
そんな新撰組を、軽んじられざるべき集団として見ざるを得なくさせた事件が、池田屋事件だった。
この有名な大捕り物を皮切りに、新撰組は多くの手柄を立てて幕府の中の地位も高めていく。
■
一八六四年、七月八日。
京では、新撰組の市中見回りが熱を帯びていた。
国内政局で失脚状態に陥っていた長州藩が、失地回復を狙って活発な動きを見せていた為である。
巡察から戻った若き一番隊隊長の沖田総司は、屯所の廊下でつまらなそうに、
「嫌だなあ、ぴりぴりして」
などとこぼし、新撰組副長の土方に、
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