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池田屋事件 中篇(the Tempest with Howling Edges) 新撰組
池田屋の店主は、近藤をひとまず押しとどめようとした。
だがそれが到底叶わぬと分かると、二階へ向かって「皆様方、御用あらためでございます!」と大声で叫ぶ。
二階と言っても、すぐ横に伸びている表階段とは違う方向へ主人が声を放ったのを、近藤は見た。
(裏階段か!)
近藤はそう察し、すかさず、
「総司、二階だ。永倉君と藤堂君は下」
と命じた。
四人は二手に分かれ、近藤と沖田は奥へ駆け、裏階段を駆け上がった。
永倉ら二人は階下で控える。
その裏階段の頂上に人影があった。手を刀の柄にかけた、長州浪士である。
この期に及んで抜いていないとは甘い、と近藤は一息に踏み込み、斬り上げた。
脇の辺りをぱっくりと赤く切り開かれた、池田屋最初の死体が、狭い階段を転がり落ちた。沖田はそれを跳ねてかわし、近藤と共に階段を上がり切る。
先程外から見えた怪しい大部屋は東の端であり、裏階段を上った目と鼻の先にあった。
近藤は唐紙を開け放つと、
「全員動くな、御用あらためである!」
と大音声を放った。
長州浪士は驚愕しながらも、さすが次々に刀を手に取った。
だが、刀さえあれば切り合いが出来るわけではない。
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