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池田屋事件 後篇(the Collapse and Nativity) 新撰組
池田屋では、一騎当千の二人による、しかし絶望的な戦闘が続いていた。
外へ逃げ出そうとした浪士が一人、その為に集団から離れ、永倉新八は容易にその背中を切り下げた。
ぎぃゃっ、という重い叫びを聞いて深手を与えたことを悟り、振り向いた永倉のその先には、厠へ逃げ込もうとする別の浪士がいた。
永倉が追いすがる。
浪士は厠に飛び込む。
永倉が弓を絞る要領で刀を引き構え、それから思い切り踏み込んで突きを放った。
間一髪、ガン、とけたたましい音を立てて浪士が厠の戸を閉める。
しかし永倉の剣の前では、杉の板など薄紙同然である。剛剣が、ドッと戸板を突き抜いた。
戸の向こうで、急所を貫いた手応えがある。
厠の中から、「ごおッ」と断末魔が聞こえ、剣が伝える敵の肉の震えが、致命の一撃であったことを永倉に告げた。
永倉は素早く体を整え、剣を構え直す。
そしてまた、新たなる修羅場。
近藤勇は、いまだ無傷であった。
実戦の場での近藤の気勢は凄まじく、相手はまずその勢いに呑まれて腕が縮む。
そうした敵に近藤は鉄砲水の様に斬りかかり、何人かには手応えのある斬撃を浴びせていた。
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