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その日も、真っ白い天井が初江を迎えた。だが、朝はこなかった。
「午前6時25分、死亡確認」
主治医が初江の瞳孔、心音、心電図モニターを確認したのち、そうつぶやいた。
しかし、周りの看護師をはじめとする医療関係者たちに驚きの様子はない。
「新薬は無事に作用したようです。きっと、次のみらいでも充実した人生を送ってもらえることでしょう。」
主治医はそう言うと記録をつけ始めた。
初江は直近の検査で死期が迫っていることが分かっていた。しかし、本人にはそのことはあえて告げなかった。
バレンタインデーの夕食で出されたチョコレートは近年開発された新薬だった。
死期が近い患者にこれまでの走馬燈を体験させてくれる薬で、最後は次に生まれ変わった際の体験を少しだけ予告してくれるという不思議な薬だった。
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