人生を振り返れば...

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初江は、キャバレーのソファーに座っていた。隣には見知らぬ男性が座り必死に会話を広げようと邁進している。 初江は成人する頃には両親を亡くし、兄弟もおらず、貧しい生活を送っていた。 なんとか生活をするためにキャバレーで働いていた時期があった。 それは初江にとって辛く苦い思い出だった。水商売が好きな訳ではなく、お金のために仕方なく働いていた。時には酒に酔った客が身体を触ってくることもあった。 その度に、嫌な顔をすることなく、ニコニコと無理に笑顔を演じた。客に嫌われて、お店を続けられなくなるくらいならと、我慢し続けた。 当時は女性が働くという風潮はなく女性が働ける職は限られていた。 無我夢中でウイスキーの水割りを作っていると、手を滑らせてグラスを床に落としてしまった。はっと目が覚めた。
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