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いろいろ探してみたが、なかなか見つからない。しかし、亜香里はベッドの下にA4サイズの箱があることに気づく。なぜだか、その箱の中に目的のCDがあるに違いないと思われ、亜香里は箱を取り出す。震える手で箱を開けると、やはりそこには目的のCDがあった。それは、半田薫子というシンガーソングライターのファーストアルバム。
しかも、その上に『お姉ちゃんへ』とだけ書かれた便箋が一枚置かれていた。何か本文を書く前だったように思える。亜香里がその便箋とCDを取り出すと、その下に原稿用紙の束があった。表紙には、小説『夢の中の真実』と書かれていた。佳奈美が小説家志望であることは知っていたが、実際に佳奈美が書いたものは読んだことがなかった。佳奈美はどんなものを書いたのだろうか。すでに遺品のひとつになっていたその原稿用紙をそっと取り上げると、その下に一枚の絵があった。中学一年大山佳奈美『夢』と右下に小さくタイトルが書かれている。その絵を見た瞬間、亜香里は戦慄で身体の震えが止まらなくなった。
ガラス窓の向こうの蒸れた景色がゆらりゆらりと白く光っている。
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