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「思い出したか、この色男め!」
肘でグリグリやってくる谷平を防御しつつ、
「あぁ、思い出した」
デレ顔を隠そうと手のひらで口元を抑えるが、頬が緩んでしまう。
さて、期待に満ちた目で覗き込んでいる女子2名。
キスマークには違いないが。
ちょいワルのまま、クールにお茶を濁すべきなのか。それとも、愛娘のエピソードを聞かせて、家庭的なイクメンをアピールすべきか。
ふむ。
唸る声ひとつ上げると、俺の右手から絆創膏がさっと抜きとられた。ポカンとしている間に襟元にピッピピっとそれが貼られ、正面から両肩に手を置かれる。
「どぉぉでもいいから、仕事しろっ!」
「…ふぇい」
噛んだ。
凄み顔の課長が怖い。
こうして、キスマークは闇に葬られた。
「了」
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