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ピンヒールの耳障りな音が近付いてくる。
隣の席に座ると、女は唐突に話し始めた。
カウンターの客はその女と僕だけだ。
関わり合いたくなかったので、女の存在を完全に無視してやり過ごそうと思った。
しかし、女はめげることなく僕に話し掛けてくる。
「あなた。聞いてるの?」
-まずいぞ、本格的に絡まれそうだ。
「ねぇ。小鳥って。基本的に愛らしいものでしょう?」
耳に心地好い声だからたちが悪い。思わず合いの手を入れそうになってしまう。
「小さいからって甘く見たのが間違いだったの。あいつ、人間の欲望を喰らって生きてたのよ」
「人間の欲望?」
僕は不覚にも聞き返してしまった。
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