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「でもさ、欲望を喰らうって言っても、欲望は物質じゃなくて、何て言うのかな…感覚って言うか、兎に角、食べられないよね?」
「タクちゃん。駄目だよ。真面目に考えたりしちゃあ。本当の話なわけないでしょ?」
マスター得意の玉突き攻撃だ。僕のことを小バカにしているようでいて実は女のことをこけ下ろしているのだ。
しかし、僕はマスターのように女の話を鼻で笑ったり出来なかった。
荒唐無稽な話だというのは百も承知だが、何故かとても重要ことを聴かされているという気がする。
「何故、僕に青い鳥の話をしようと思ったの? 暇そうに見えたのかな?」
「やっぱり、気付いてなかったんだ?」
笛の空吹きのような、か細いため息が聴こえた。
「此処へ来る前、スクランブル交差点からずっとあなたの後をつけてたんだけど」
僕はゾッとして勝手に尻が少し浮いてしまった。心の動きがすぐに顔に出る方なので、女は少し慌てた風だった。
「そんな、怖がらなくてもいいのよ。危ない女なんかじゃないから・・・・いや、危ないかなあ」
「完璧に危ないでしょう? 普通、見ず知らずのヒトの後をつけたりなんかしないから」
「だって、青い鳥がね・・・・」
「何? そこに戻るんだ?」
「青い鳥がね。あなたの肩に留まったのよ。それで・・・・」
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