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女顔の自分が悪いのだけれど……隣にいるキサキよりも白い肌に、最近染めた茶髪はさらに色素が薄く見える。まつ毛は無駄に長くて、まつ毛エクステしてる疑惑さえ持たれる始末。大丈夫だ、そのうち男らしくなる……はずだ。
「一応さ、今度ネットにも動画上げてみるし……話題にさえなれば、あとは実力で押すしかない。元歌姫なんだから、ね」
そう言いながら、声変わりした今の僕に、どれぐらいの実力があるのか不安だったりする。声量には自信があるものの、あのころのようなハイトーンボイスはもう出ない。
「もう、年が明けるよね……」
「年末年始に宣伝する気だから、ね。冬休みを使って」
「がんばって。ツバサ君。私もファンサイト作り直すし」
「……ありがとう、キサキ」
「その代わり、ファンクラブの番号は一番予約ね?」
「わかってるよ」
本当は、そんなものなくてもボクにとっての一番はキサキだと、言いたい。
でもその言葉を踏み込んで言う勇気もない、ビビりな僕とデビュー前という立場。
ため息をつきたい気分のまま、ボクはPVの撮影に向かった。
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