本編

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「まあ、ツバサならやれるよ。あのデカいホールを埋めて、そこで歌う度胸があるんだから、歌う事には問題ないでしょ」 「白けた顔を見るかもしれないのは怖いですけどね、ボクも」 (それでも、キサキが目の前で笑って聞いてくれるなら、それでいい)  プロとしては失格な思考回路かもしれないけれど……彼女が喜ぶのなら、頑張れると確信できた。 「なんか幸せそうだね、ツバサ」 「え?」 「歌うときに、満ち足りた顔してる。恋でもしてる?」 「そんな」 「まあ、歌手にとっては恋はいい栄養だよ。今はアイドルではないんだから、そういうのはほどほどにご自由にね。でも、ツバサのビジュアルだとアイドル的なファンもつくとは思うけれどね……その場合は空気読んでね」 「男の?」 「いやいやいや。女の子のだよ。ツバサは自覚ないけれど、美男子だからね?」 「女顔なだけじゃないですか」 「そういうのが好きな女の子が多いんだよ」 「ボクはたくましくなりたいですけどね」  ぼそりとボクはつぶやく。  マネージャーはあきれたようにボクを見た。
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