スルメの話

2/11
前へ
/11ページ
次へ
 母はある日突然、逃げるように家を出た。  原因は父にあった。酒を飲むと人が変わり、毎晩、母に暴力をふるった。  僕は驚かなかったし、悲しくもなかった。いつかこんな日が来るだろうと、心のどこかで準備ができていたのだろう。あんな毎日じゃ逃げ出さない方がおかしい。母が家に存在しなければ、父が怒鳴ることもない。なによりも毎晩の悪夢から解放される喜びの方が大きかったのだ。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加