一話・夢と現実

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一話・夢と現実

ここまで来るのに随分と時間がかかってしまった。 俺の拠点とは随分違う煌びやかな屋敷。 侵入するのすらに困難で入るのも容易くない。 そのせいで犠牲は決して少なくなかった。 失ったものの方が多いだろう。 だがそれだけ救ってきた自信がある。 そしてその守ってきたものの為にもここで全てを終わらせなければならなかった。 「さて、決着と行こうか」 「結果は見えているよ、少年。私が勝ち、キミが負ける。それは既に決まったことだからね」 「ほざくなよ。やってみなくちゃ、分かんねぇ」 「そうか、キミとは仲良くできると思ってたんだけどね」 男は残念そうに呟き剣を抜いた。 金色に輝く英雄に見合っただけの力を有した剣。 幾度となく俺を苦しめ、敗北を味合わせてくれた最悪の象徴。 俺も男に習い、包帯で巻かれた槍を担ぐ。 「それではどちらの正義が正しいか。決めようか」 刹那、男の姿が揺らぎ、消えた。 反応が困難なほどの神速。 だが既にそれは一度見ていた。 体を回転させて放つ横凪ぎ。 迎え撃つは体重を載せた突き。 点と線が重なり、火花を散らす。 力は拮抗するが長くは続かない。 互いに狙いは同じだったのか跳ぶように離れる。 再び構え、当たれば間違いなく必殺となる攻撃を放つ。 何度も何度も剣と槍が衝突する。 俺も相手も狙いは同じ。自分の間合いで戦うことだ。 間合いが剣よりも長い俺の槍は距離を詰められては不利。 そのために一定の距離が必要だ。 相手も槍の欠点は理解している。 あいつの目的は俺の猛攻を掻い潜り、俺の間合いの内に入ること。 戦闘を有利に進めるがための陣取り合戦。 一度入られれば速度で劣る俺は離れられない。 ただ必死に剣を捌き続ける。
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