Chapter.2

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「開けてみて」 優奈に促され、「何かなぁ?」わざとらしく、樹が箱を持ち上げる。 十年前より一回りほど大きなその箱を、樹はもったいぶった手つきでゆっくり開けた。 「えっ……?」 入っていたのは、A6サイズの黄色い手帳。 愛らしい赤ちゃんの笑顔の上には、『母子健康手帳』の文字が並ぶ。 「ゆ、優奈……?」 驚いて見つめる樹に、優奈がにっこり微笑んだ。 「できちゃった」 優奈の頬が、みるみる赤く染まっていく。 「マジで……?」 溢れる涙を手の甲で拭うと、樹は優奈を抱き締めた。 夕食の後、優奈の手作りトリュフを二人で食べる。 アルコールフリーのそれは、ほんのり甘い、ミルクの味がした。 (了)
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