空の飛び方

4/45
前へ
/45ページ
次へ
ザワザワという音が消えると、あたりはとても静かになりました。 その中で、空を飛べない翼が申し訳なさそうにどんどん下へ下がります。ドラゴンもさっきの不機嫌な声ではなく、クルゥという悲しげな声を出しました。 その時ー 「アハハ!またやってる!」 「何回やっても飛べるわけないのに!」 「バカなドラゴンだなぁ!」 「やーい!ダメドラゴーン!」 小鳥が、ウサギが、リスが、クマが、森中の動物たちがドラゴンのことを笑い始めました。みんな遠くからドラゴンのことを見ていたようです。 動物たちの笑い声が森に響きわたります。 「だいたい、森をこんなにして迷惑なんだよ!」 「お前が通るたびにびっくりするだろ!」 「飛べないドラゴンは大人しくしてろ!」 ギャアギャア、ワーワー、ゴウゴウ。動物たちの声が激しくなってきました。じっと黙っていたドラゴンはキッと目を見開くと、大きく息を吸い込みます。 グワォォォォオ!!! ビリビリと空気を震わすドラゴンの吠え声が轟きました。どこまでもどこまでも残る声。 やっとのことで音が消えると、動物たちは我先にと逃げ出します。さっきまでの怒鳴り声が嘘のように、動物たちは怯えていました。 カサカサカサカサ…。 葉っぱのこすれあう音だけが響きます。 ドラゴンはまだフーフーと唸っていましたが、だんだんと落ち着きを取り戻したようです。 誰もいなくなった空にポツリと声が吸い込まれます。 「ぼくだって…飛べる…。いつかきっと…。」
/45ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加