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ザワザワという音が消えると、あたりはとても静かになりました。
その中で、空を飛べない翼が申し訳なさそうにどんどん下へ下がります。ドラゴンもさっきの不機嫌な声ではなく、クルゥという悲しげな声を出しました。
その時ー
「アハハ!またやってる!」
「何回やっても飛べるわけないのに!」
「バカなドラゴンだなぁ!」
「やーい!ダメドラゴーン!」
小鳥が、ウサギが、リスが、クマが、森中の動物たちがドラゴンのことを笑い始めました。みんな遠くからドラゴンのことを見ていたようです。
動物たちの笑い声が森に響きわたります。
「だいたい、森をこんなにして迷惑なんだよ!」
「お前が通るたびにびっくりするだろ!」
「飛べないドラゴンは大人しくしてろ!」
ギャアギャア、ワーワー、ゴウゴウ。動物たちの声が激しくなってきました。じっと黙っていたドラゴンはキッと目を見開くと、大きく息を吸い込みます。
グワォォォォオ!!!
ビリビリと空気を震わすドラゴンの吠え声が轟きました。どこまでもどこまでも残る声。
やっとのことで音が消えると、動物たちは我先にと逃げ出します。さっきまでの怒鳴り声が嘘のように、動物たちは怯えていました。
カサカサカサカサ…。
葉っぱのこすれあう音だけが響きます。
ドラゴンはまだフーフーと唸っていましたが、だんだんと落ち着きを取り戻したようです。
誰もいなくなった空にポツリと声が吸い込まれます。
「ぼくだって…飛べる…。いつかきっと…。」
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