紅の騎士

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 残念ながら何も持ち得なかった彼らは卒業後にどこへ行くのかーースターシャは、大人になってからそれを知った。  彼らは、魔道錬金術の素材にされていたのだ。  現存する魔動甲冑や魔犬兵は、姿を変えたスターシャの後輩たちだったーー  頭がおかしくなりそうな現実から、しかし彼女は逃げなかった。  異世界の研究に心血を注ぎ、恵まれた容姿を時には女の武器として使い、資金調達のために皇帝に取り入った。  資金がなければ異世界の兵器など手に入らない。新しい兵器を皇帝に採用させなければ、今後も子供たちが安価で手っ取り早い錬金術によって兵器に変えられてしまう。  子供たちから新たな犠牲を出さないために、彼女が必死で調達したのが異世界の陸戦用ゴーレムであった。 「ふむ……確かに高いが、悪くはない。紅いからヴァーミリオンとでも名付けるか……」  高いと言っても2万クラウンだ。皇帝の月収の2%にも満たない。ディオニスがその気になれば、10体や20体くらい導入するのはわけもないのだ。  よかった。気に入って貰えたーー美しい宮廷魔導師スターシャは、内心ほっと胸をなで下ろした。
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