追放されたと思ったら

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追放されたと思ったら

 世の中には理不尽な出来事がよくあるし、いつそれに自分が見舞われるかなんてわからない。それは往々にして因果応報とか言われることもあるけど、少なくとも俺はそんなこと言われるほど悪いことした覚えはないし、これからもやろうだなんて思ったことは無い。  まあそれはそれで置いておくとして、昨今の冒険者事情というものはそれはそれは厳しいものがある。  なんかよくわからんけど、古(いにしえ)の魔王だとかなんとかが復活するし、それまで底辺職の代表みたいだった冒険者がいきなり担ぎあげられるし、勇者だなんだとか出てくるし、そんな世の中だから以前よりも実力主義ってのが蔓延るしで、とても生きづらくなっている。  冒険者に限ったことではないんだけど、それが顕著に現れているのが冒険者というだけで。  そんなご時世なもんだから、なんだか最近はパーティを解散したりだとか、実力的に劣る人材を追放したりだとかが流行っている。いや流行ってちゃダメなのはわかるんだけどさ、皆死にたくないしね。魔物のレベルは上がってるし、冒険者はわりと皆休みなく働いてるし。そんな中自分たちの足を引っ張るような輩がパーティにいたら、そりゃ罵って追放したくなる気持ちもわかる。  でもな、一歩引いてよく考えてみてほしい。それは追放する側の理屈であって、される側の理屈ではないのだ。された方はたまったものではない。  今まで複数人と一緒に活動してたからこそなんとかなっていた現状から、いきなり放り出されるのだ。それはどう考えたって死活問題だし、追放されてそのままお亡くなりになったなんて話も珍しくない。  だから問いたい。安易にパーティから追放してしまうようなヤツらに問いたい。 「あなた達に良心はないんですか?」 「人のいる町で声をかけてやったのがせめてもの良心だ」  俺の目の前には、なんだかキラキラとしたイケメンがいる。金の髪が輝いていて、なんだか伝説の武具っぽい鎧と剣を持っている。  両隣りには夕陽のような髪色の、切れ長の瞳の女戦士と、深い海のような髪色の、おっとりとした女僧侶。  それと、後に一歩引くようにいるのは、俺の幼馴染の灰色の髪をした大人しめの女性。
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