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目が覚めると、故郷の近くの森の中だった。
小さい頃に毎日のように入っていたからわかる。ここは、俺とシャオの故郷の森だ。
どうしてこんな所にいるんだろうか、なんてことをはっきりとしない頭でぼんやりと考える。だんだんと自分に起きたことを思い出して、じくじくと胸が痛む。
「なんなんだよ、ちくしょう……」
力なく声が漏れて、それだけで気力がすべて持っていかれた。立ち上がる力も湧いてこない。
なんでこんな森の中に寝ていたのかなんてわからないが、どうせシャオか女僧侶が転移の魔法でも使って俺をどこへなりと飛ばしたのだろう。ここに寝てたってことはシャオが使ったのだろうか。
睡眠魔法で寝かせておいて、宿に泊まらせるようなことすらしない。シャオの一件もあって、俺の中で地に落ちていた勇者パーティの評判は、いよいよ限界突破して地下にまで突入した。
人の女寝取っておいてなおかつ三股もするような最低の人間が、なーにが勇者だ!! ただのスケコマシじゃあねーか!!!
それに引っかかるシャオもシャオだクソが!! 俺と過ごした20年余りの時間よりも、たった数年しかいなかった勇者の最低野郎の方がいいってか!? そんな奴だとは思わなかったわ!!
それにあの勇者の腰巾着の二人組!!
俺より弱いくせに、なに勇者パーティの実力者ヅラしてんだよ!! 何度庇ってやったと思ってる!! 何度助けてやったと思ってんだ!!
特別なスキルも何も無い俺がここまで来るのに、【預言者】なんてスキルを持ってるシャオに相応しくなるために、どれだけ努力したと思ってる!! スキルに頼り切りで大した実力もなかったお前らのために、俺がどれだけ骨を折ったと思ってんだクソが!!
あーもう!! クソッ!! クソクソクソクソクソクソ!!
もう、もう――――――――!!
……どうでもいいなあ……なんだかさ。
努力も全部無駄。信頼関係? あると思ってたのは俺だけでしたー残念!!
なーんて、やってらんないよなぁ。
「はぁー……これからどうしよ」
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