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第五章 時の流れ
麗奈side
「あの事件からもう二年もたったのね……」
そう、あの事件からもう二年もたった。
何事もなく、ただただフランスで三人平和に暮らしていた。
「マァ~ミ」
そう、三ヶ月前に凱が言葉を発したのだった。その時のことはきっと、生涯忘れない出来事になるだろう。
三ヶ月前
「麗奈、子供っていつから言葉を発するようになるんだ?」
「うーん。そうね………一歳と二歳の間じゃ無いかしら?」
「じゃあ、もう少しかもな!」
本当に智巳には感謝しても仕切れないくらいだ。
凱を…血のつながりもない赤ちゃんをまるで我が子のように可愛がってくれている。
凱の夜泣きにも、仕事で疲れ切っているはずなのに、「どうした~?凱~怖い夢でも見たのか~?………パパが来たから大丈夫だぞ~」と声をかけながらあやしてくれた。
一度、どうしてそんなによくしてくれるの?と聞いたときに、
「俺は人生で子供をつくるきは無かったんだ。……今もそうだな。
俺は子供と一生関わる機会が無いかも知れない。ましてや子育てなんて二度と体験できない。だから、人生一度きりのこの一瞬一瞬が幸せで仕方ないんだよ!!」
って、満面の笑みで智巳が言った。
私は思わず涙がこぼれた。
「凱と私を見つけてくれてありがとう」
無意識に、私はそう言った
この人には将来、絶対に恩返ししようと心に決めた。
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