友達の詩(アサキ×ルン)※

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墨田川クルーズ船に二人で並んで座ると、川面や景色ではなくて上ばかり眺めた。 「下から覗く橋なんて。初めて見た」 アーチ型、つり橋、複雑に鉄骨が組まれているものから、シンプルな構造のものまで。 上を眺めたままのアサキが。 「ね、ルン君。いいでしょ~?3分に一回は橋の下通るんだけど。全部違うのが面白いんだ」 「確かにこれ、女子が食いつくとは思えないな…」 俺は凄く好きだけど。という月の呟きに。 「――ルン君がいいなら、いいよ」 アサキの言葉に、月はまた胸の奥が少し焦げてしまうような痛みを覚える。 「アイダさん、何か目的違ってきてないか?」 と言うだけで精一杯だ。 「アハハ、ホントだね」 でも。 好きな人と、 言葉は少なくても、並んで一緒に居られることが。 こんなにも幸せなことだとは知らなかった。  船の終点の浅草で浅草寺裏のあんぱん専門店に行って。  銀座線を上野で降りたら。  不忍池でお約束の手漕ぎボートを漕いだ。  左右のバランスが取れずにぐるぐるとアサキが同じところを回るのに耐え切れず。 「どいてアイダさん!」 揺れるボートの上で座る位置を入れ替えて、月がやっと岸にたどり着かせる。  昼は路地裏の「松島」でラーメンと手のし餃子を食べて。  動物園でアサキの解説を聞いて。  一日の内に、月はアサキとの思い出を飽和しそうなほど詰め込まれた。  嬉しいのに。  こんなに嬉しいのに、またこれから先、思い出だけ抱えて一人で居なければいけないと思うことが怖くて。 「ルン君、じゃあ、次はね…」 動物園を出る頃には日は落ちかけていて、切ないオレンジ色の光が公園の桜の並木道を照らす頃合だった。 「――アイダさん。もう、いいんじゃない?飛ばしすぎは、疲れる…よ」 「ゴメン。俺ばっかり楽しんじゃったみたいだ。――じゃあ、次ルン君のしたいこと、しよう?ルン君、どうしたい?」
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