通り雨の後で (サトリ×颯)

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車へ入るようそれとなく促した積もりだったが、 「――」 雨で湿って重くなった髪を荒くかき乱す強い陸風を受けたまま、サトリは動こうとしない。  颯の思考のずっと外側で、サトリが何を考えているのかといえば。  雑音を遮り集中してやり遂げた後に訪れる、OFFにスイッチを切り替える瞬間、二度と目覚めない永遠の惰眠を貪ることが出来たらいいのに、という願望だ。  もしそんな事があったら、彼の隣で眠りたい。 『颯くん』 彼には迷惑だろうが。 他のメンバーには頼める訳がない。 自分の闇に、飲み込まれそうになる。 「そろそろ帰ろっか?――明日入り時間一緒だよね」 優しく促してくる颯の腕に、 『助けてよ』 叫びながら縋れたら、楽になれるような気もする。 それなのに、 結局諦めの嘆息と共に、口の端には歪んだ笑みが浮かんでしまうのだ。 「そうだね。帰ろう。――家に来るでしょ」  サトリは何気なく言ったつもりだったが、零れそうな程瞳を見開いた颯は、次の瞬間微笑んで頷いた。 「おう、泊まってくよ」 『おいおい、そんな可愛い顔してくれんなよ・・・折角我慢してんのに』  颯の目まぐるしく変わる表情の豊かさに、サトリの暗澹とした感情がどれだけ乱されてきたか。 『違うか・・・これに今まで救われてたんだな』  また颯の思考の外側を走りかけていたサトリは、笑顔が消えて怪訝な顔で覗き込むその人の頬を両手で挟んだ。 「颯くん。俺ん家に来るからには・・・いいよね」   不穏な気を察した颯は、慌ててサトリの手の中で首を振った。 「サトっさん・・・入り時間一緒だってオレ言ったよね。俺ヤダよ腰砕けでニノとかコノルンに会うの」 「アイダちゃんはいいのかよ。――帰って出来ないなら、此処でやるぞ」 反応のよさが上回るサトリは、逃げる小動物と化した颯を本能的に追い掛けるように、掴んだ腕を引っ張った。 「え?ちょッ・・・ダメだって!」
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