水城 れな

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水城 れな

私が「水城 れな」として働き始めたのがこの頃からである。 自分の置かれている状況に危機を感じたが給料には一定の金額がある。 そう考えた私は「時間を使う」ことに着目した。 もともとこの世界には憧れはなく、良いイメージも浮かばなかった。 でも私の行動はぶれなかった。 昼間は別の仕事をしてそのまま夜も仕事をする。 このサイクルで働ければ少しでも早くお金は返せる。 柚菜は第2志望の高校に通うことになった。 あれから彼女はこんな私を受け入れてくれた。 だから「大学費用だけでも力になりたい。」 そう強く思えたのだ。 初めての夜の仕事は自分が予想していたよりもストレスの掛かるものだった。 「ドリンクバックとか指名料とかその辺はよく分からないから とりあえず遅刻しなければいいや。」ぐらいの気持ちでいた。 自分に自信があるわけでもないから時給だけでもしっかりもらおう。 そんな考えでいた私は他のキャストを見て不安が募った。 私には個人事業主としての自覚がないから温度差を感じたのだ。 「まだ一緒にいたいな~♪」 「一緒に乾杯したいんだけど、一杯頼んでもいいですか~?」 「よかったら連絡先交換したいな!」 私が想像していたよりもみんな必死だった。 必死というか、それが当たり前だった。 私はまるで幼少期の自分戻ったかのように自己紹介すらままならない状態。 お客さんにおねだりをするわけでもなく 特に自分から話しかけることもできないぐらいで 「れなちゃんは何でキャバクラで働こうと思ったの?向いてなくない?」 なんて言われる始末だ。 まるで楽しくないキャストで、ヘルプ要因みたいな感じのまま。 ただ、そんな状態でも続けたのは柚菜のためであるから。 そこに焦点が合ってたからこそ続けられたんだと思う。 それがなかったらきっと当に辞めていただろう。 私は今までの生活から180度変わって毎日仕事に明け暮れた。 両親には当然キャバクラで働いてるとは言っていない。 夜まで勤務しているとしか言っていない。 月にして夜の給料の大半を返済に回した。 きっと疑問に思われていたかもしれないが、私は何も気にせず毎月返済し続けた。
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