おいしいを半分こ

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B「あのさ、脳天気な顔しているところ悪いんだけど、そのパン大事に食べなよ?」 A「ん?」 B「久しぶりの混ざり物のないパンが嬉しいのはわかるけど、しばらくまともなパンを食べれないと思った方が良いからね。  アホ政治家が紙幣刷りまくったせいで物の値段が昨日の5000倍になったし、地方じゃ飢饉で食べれるものは草の根でも食べたって言うし、どこいったって何が入ってるかわからない混ざり物のパンしか売ってない。てかそれすら無い。本当に食べ物が無い。  これからの冬は本当に腐りかけの肉を香辛料で誤魔化しながら食べる日々になるよ」 A「だからこそこれはおいしく食べたいでしょ?おいしそうにたべないと!」 B「まあ、そうだけどさ。君はもうちょっと非情な現実を見た方がいいと思うよ。明日にでも服を茹でて食べ始める奴がでても不思議じゃない世の中だからね」 A「じゃあ、半分食べる?服はおいしくないでしょ?」 B「………………いや…僕は服は食べないよ……というか、それ、何日ぶりのまともな食事だと思ってるの?せっかく働いて貯めたお金で買ったんだから、もっと大事に食べなよ」 A「大事に食べたいから、二人で食べようよ」 B「…………」 A「お腹が減ってるからイライラしてるんだよ」 B「そんなんじゃないよ…でも、貰ってもいいかな?」 A「どうぞ!」 A「おいしいね」 B「そうだね…うん、おいしい」 A「冬が越せるといいね」 B「今度は僕が買って半分こすれば、すぐに春になるよ」  二人は半分のパンの甘さを噛みしめた。
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