15人が本棚に入れています
本棚に追加
3
翌朝。清々しい空気が優しく俺を包み、爽やかな小鳥の囀りが聞こえてきて、俺の、
「ひーめー……」
平和な日常が、
「今日も愛してるよ」
始まらない。
「朝っぱらからキスするんじゃねえ!!」
今や人を殴ることにほとんど抵抗を感じなくなった俺は、その原因となった人物、琉賀尚雪に平手打ちを食らわせた。当然、頬に手形がつくほど手加減せずに。
「朝から姫の愛のムチをもらえるなんて、俺って最高に幸せ者」
「……」
時々、俺は琉賀がSなのかМなのか分からなくなる。
そして俺は琉賀の能天気な顔を眺めながら、昨日の出来事を思い出して頭痛を覚えた。
昨日、琉賀の爆弾発言を受けて殺気立ったクラスメイトたちが、さらにその噂を広めていき、嫉妬に狂った奴らのリンチに遭いそうになった時、寸前で天王寺先輩に助けてもらったり。それから、どうやって琉賀をその気にさせたのかと聞かれながら、危うく襲われそうになったりと、いろんな意味で大変だった。
何度も全ての原因をつくった琉賀に文句を言おうとしたのだが、昨日言ったあの言葉を取り消してくれる見込みは低く、また俺を守ると言い出しそうなので、自力で解決することに決めた。
奴に守られるというのはプライドが許さない。そして、守ったからには何か交換条件でも飲まされて、あれよあれよという間にいいようにされてしまう図がありありと思い浮かぶ。
そういうことで、俺は奴を殴り倒す代わりに避けることにした。距離を取るうちに嫉妬も怒りも興味も鎮火してくれるだろうという計画だ。
ところが。
移動教室の際。
「姫、次は何の授業?」
休み時間の際。
「ひ~め、一緒に遊ぼ」
昼食の際。
「姫、俺とランチにしませんか?」
翌日もその翌々日もこの繰り返し。そして一週間が経過。
最初のコメントを投稿しよう!