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「だああ!もう!移動教室の時といい、休み時間の時といい、昼食の時といい、廊下ですれ違   う度に、休み時間になる度に、欠かさず声かけるんじゃねえよ!しかも俺は姫じゃねえって 何度言わせるんだ!」  一息に叫びながら言ってしまったせいで、全力疾走した後のように息が乱れた。  琉賀は俺が避けてもこんな感じにしつこく付きまとってくるので、これでは意味がない。それに、これではいずれ琉賀に気付かれてしまう。  現に、これまで幾度となく勘づかれそうになった。  例えば、廊下で立ち話をしていた時、俺を見つめる冷たい視線に気付いたのか、琉賀はきょろきょろと周りを見回して、小首を傾げた。  またある時は、呼び出されてリンチに遭いそうになった時も、実はそのすぐそばを琉賀が俺を探しながら通り過ぎたのだ。  その時は心臓がいくつあっても足りないほど緊張した。 「じゃあ何て呼べばいいの?王子?」 「…………」  俺は綺麗に無視して、草取りをしに行くために下駄箱から靴を取り出す。すると、白い何かが靴を取り出すと同時に落ちてきた。  それは、小さなメモ用紙のようだった。拾い上げて文面を目で追う。 「……」 「幹仁?」  ほぼ反射的に背中に隠した。琉賀は俺の行動に対し、不審そうに眉根を寄せる。 「何か隠しただろ」 「えっ……あ、やっ、別に何も?」  隠し事が苦手なせいか、声が妙に裏返ってしまった。案の定、それで誤魔化しが効くはずもなく、琉賀に手を出された。 「見せろ」 「え~何のこと?」  視線を泳がせながらとぼける。俺でさえ、何か隠しているのが丸分かりな態度だと思う。 「俺を見ろ」 「え?……ん……」  冷や汗を浮かべながら、そろりと琉賀を上目遣いに見上げた途端、噛みつくようなキスをされた。 「……っん……や、めろ」  首を捻ってその激しい口付けから逃れようとするが、しっかりと顔を捉えられているせいか、無駄な抵抗に終わる。そのうえ、俺にとって分が悪いことに、背後は壁に阻まれていて、逃げようにも逃げられなくなっている。
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