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俺は言いかけて、琉賀のむかつくほど綺麗な顔が至近距離にあることに気が付き、口を閉ざす。この後の展開を想像できてしまうような危ない体勢だ。
「んう……」
そして暴れる間も与えずに、再び琉賀にキスを仕掛けられる。
「泣きたいほど嫌なら、あいつのものになる必要はない。というかそんなこと、俺が許さない」
唇を離して至近距離で言われたせいか、俺の鼓動が不自然に脈打つ。顔が熱い。甘すぎる吐息が頬に当たって、妙にくらくらした。
「けど、野球……」
もう自分が何を言いたいのか分からないほど、頭がぼんやりとしてしまっていた。
「大丈夫。俺がなんとかする。……ていうか、絶対誰にもやらん」
「ん……」
再び口付けられたかと思うと、その唇はやがて顎を伝い下り、鎖骨の辺りで止まった。そこで小さな痛みが走り、我に返る。
「今、何した?」
「ん?俺のって印。まあ後で見てみ」
「そもそもお前のになったつもりはないのだが」
「まあまあ、いいじゃないの」
「よくねえよ」
「ねえ姫、なんか今日は大人しいね。今めっちゃ理性が飛びそうなんだけど。襲っていい?姫 っていつも可愛いけどさ、さっきの顔は反則だよ?」
満面の笑みで琉賀は言う。それが俺の地雷を踏んでいることに気付かずに。
「……襲うとか姫とか可愛いとか、俺が腹を立てることをわざわざ満面の笑みで言うな!」
琉賀の厚い胸板を突き飛ばした後、脇腹に蹴りを食らわせた。
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