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一方、その頃、二人のやり取りのことなど知らない俺はというと。
「あの野郎~!」
風呂場の鏡を見ながら、首元を見て発狂していた。
翌朝。
「てめえ、なんてことしてくれてるんだよ!」
俺は琉賀の前で襟元を開いて、そこを見せながら怒鳴った。
「何って、だから印……」
「そんなんが聞きたいんじゃねえ!これはどこをどう見てもキスマークじゃねえか!」
「……」
「琉賀?」
その時になってようやく琉賀の様子がおかしいことに気が付いた俺は、怪訝に思って眉を潜めた。
「名前で呼んで」
「どうし……っ」
言い終える前に強引に引き寄せられ、唇を塞がれた。
「んっ……何す……」
「お願いだから読んでくれ」
「……っ?」
まるで懇願するように、泣きそうな目になってせがまれて、戸惑った。
「消えないんだ……俺の中で、あの声が」
顔を覆いながらくぐもった声で琉賀は言う。明らかに様子がおかしい。
「声……?」
尋ねるが、琉賀は首を振って答えるのを拒む。
「だから呼んで」
そのだからの意味も分からないが、なんだか俺まで不安になってきて、その通りにしてやろうとした。
「りゅ……」
ついいつもの癖で名字で呼んでしまいそうになり、慌てて口をつぐむ。しかし、聞かれてしまったらしく、腕を引っ張られる。
「だから、名字じゃないって。尚雪って呼んで」
耳元で甘く囁かれ、変に鼓動が速くなる。そのうえ耳を噛まれ、キスまでされてしまい、聞こえてしまうのではないかと思うほど鼓動が暴れ始めた。これではまるで。
それ以上考えたくなかったのと、人から見えない草むらの中に押し倒されたのとで、俺の思考は途切れた。
「ん……は……」
昨日と全く同じ体勢のままで、息をするのを忘れるほどの激しいキスを繰り返され、俺は一瞬抵抗するのをやめてしまった。ほんの一瞬だけだが、その甘い感覚に身を委ねたい、という誘惑に負けたのだ。
その一瞬の隙を琉賀は当然見逃さず、俺の大事な部分へ手を伸ばしてきた。
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