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「……ん……やっ、何……」
ズボン越しだったが確かに触られた。それを認識した瞬間、咄嗟に俺は琉賀を殴りつけようとした。そう、ほとんど条件反射で。
しかし、その素早い動きを予想していたのか、琉賀は容易く拳で受け止めてしまう。そして。
「……っ」
掴んだ俺の手に唇を寄せると、あろうことか音を立ててキスをした。驚いて声をなくす俺に、琉賀はさも楽し気に、そして畳みかけるように言う。
「無防備過ぎるよ、姫」
笑いながら、再び俺のそれに触れる。体は敏感に反応した。
「あ……っ、や、やだ、……」
いやいやしながら首を振るが、琉賀は手を止めてくれない。顔を上気させて嫌がったところで、かえって琉賀の熱を煽ってしまうだけのようだ。次第に兆し始めたそれが、俺の意思を無視して存在を主張し始めて。
「あっ……」
大した抵抗もできないまま、ズボンの中へ侵入してきた琉賀の手が、直に触れてきた途端、俺は泣きそうな声で叫ぶ。
「やめろ尚雪!名前……ぐらい、ぐすっ……何度でも呼んでやる。だ……からもうやめてくれよ」
俺が情けなくも涙ながらに頼むと、ようやく琉賀は手を止めてくれた。そして、すまなそうに宥めてくる。
「ごめん幹仁。泣かないで。……でも、やっと名前呼んでくれたな」
琉賀の笑顔を見ながら、上手く話を逸らされたような気がして、俺は複雑な気持ちで顔をしかめた。
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