15人が本棚に入れています
本棚に追加
7
もしかしたら、あと何回かしかできなくなるかもしれない部活。それを存分に楽しもうと、俺は階段を駆け下りて部室に急いでいた。
「おっ、田辺じゃないか」
その途中で、担任に呼び止められる。
「なんですか」
「これ、部活の後でもいいから生徒会室に持っていってくれないか」
と言われて、予算案か何かのプリントを渡された。
「なんでですか。先生が持って行けば……」
すると担任はにやりと笑って俺の言葉を遮った。
「お前、今日俺の授業ろくに聞いてなかっただろう。ずっとぼんやりしてて。まさか恋の悩みか?青いなあ」
「!」
恋と言われて咄嗟に思い浮かんだのが。
「ないない!ないです、ありえません、はい」
顔が真っ赤になっているに違いない俺の否定は、はっきり言って説得力がまるでない。
「どちらにしろ、俺の授業を聞いていなかったことに変わりはない。よって、罰として持って行ってもらう。じゃあな」
「え?あ……」
プリントを押し付けるように渡してしまうと、担任はそそくさと去って行った。
「まあ……いっか」
取り残された俺は、一人空しく呟いた。
「……」
「……」
「……」
「……」
部活の最中のことだった。神楽坂先輩にガン見されていてやりにくくて仕方がなく、俺がちらりと盗み見ると、神楽坂先輩はにやりと笑った。笑顔なのに恐ろしく、反射的に体が強張る。
恐怖で涙の滲んだ目で野球の球を打つ俺。それをガン見し続けてにやにやしている神楽坂先輩。
それらを見た部員A、B、Cの会話。
「一体何があったんだ、あの二人?」
「明らかにおかしいよな。特に神楽坂が」
「あ~あ、とうとう幹仁ちゃんも奴の餌食か」
「餌食?」
「何だそれ」
部員Cの顔に、A、Bの目が集中する。
「あれ、知らないのかお前ら。あいつの中学の時の噂」
「噂?」
「実はな……」
最初のコメントを投稿しよう!