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もしかしたら、あと何回かしかできなくなるかもしれない部活。それを存分に楽しもうと、俺は階段を駆け下りて部室に急いでいた。 「おっ、田辺じゃないか」  その途中で、担任に呼び止められる。 「なんですか」 「これ、部活の後でもいいから生徒会室に持っていってくれないか」  と言われて、予算案か何かのプリントを渡された。 「なんでですか。先生が持って行けば……」  すると担任はにやりと笑って俺の言葉を遮った。 「お前、今日俺の授業ろくに聞いてなかっただろう。ずっとぼんやりしてて。まさか恋の悩みか?青いなあ」 「!」  恋と言われて咄嗟に思い浮かんだのが。 「ないない!ないです、ありえません、はい」  顔が真っ赤になっているに違いない俺の否定は、はっきり言って説得力がまるでない。 「どちらにしろ、俺の授業を聞いていなかったことに変わりはない。よって、罰として持って行ってもらう。じゃあな」 「え?あ……」  プリントを押し付けるように渡してしまうと、担任はそそくさと去って行った。 「まあ……いっか」  取り残された俺は、一人空しく呟いた。 「……」 「……」 「……」 「……」  部活の最中のことだった。神楽坂先輩にガン見されていてやりにくくて仕方がなく、俺がちらりと盗み見ると、神楽坂先輩はにやりと笑った。笑顔なのに恐ろしく、反射的に体が強張る。  恐怖で涙の滲んだ目で野球の球を打つ俺。それをガン見し続けてにやにやしている神楽坂先輩。  それらを見た部員A、B、Cの会話。 「一体何があったんだ、あの二人?」 「明らかにおかしいよな。特に神楽坂が」 「あ~あ、とうとう幹仁ちゃんも奴の餌食か」 「餌食?」 「何だそれ」  部員Cの顔に、A、Bの目が集中する。 「あれ、知らないのかお前ら。あいつの中学の時の噂」 「噂?」 「実はな……」
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