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9 その後
その後。
「神楽坂に言っておけよ、天王寺!」
「ああ分かった」
俺が衝撃の事実に呆然自失となっている間に話が進んだらしく、どうやら神楽坂先輩に話をつけてくれることになったらしい。
もともと、俺を狙ったのは天王寺先輩の一方的な嫉妬心のせいが大きくあり、琉賀に話をつけてもらう他なかった。そして、天王寺先輩と結託してレイプをしたという神楽坂先輩に、これ以上ちょっかいをかけられずに済むと分かって、心底ほっとした。
「幹仁、俺が天王寺に近づくなって言った理由、分かったろ?」
「うん。もう十分過ぎるくらい」
いつかの台詞を思い出し、俺は引きつった笑顔で言う。
「姫、いや、大事な後輩をあんな奴に傷つけられるのを見るなんて、二度とごめんだからな。そのためにも俺は……」
大事な後輩という単語に、俺は少なからずショックを受ける。その程度だったのかと。
「いいよ」
涙が滲んできた目を隠し、琉賀の言葉を遮る。
「え、何が?」
振り向いて俺を見下ろす気配がした。
「俺は大丈夫。絶対にああいう人には近付かない。だから、もう守ってくれなくてもいいよ。俺よりももっと狙われそうな可愛い子、いっぱいいるし、尚雪はそっちを……」
守ってあげなよと言いかけて顔を上げたところで、琉賀の怒ったような視線にぶつかり、それ以上言葉を紡げなくなった。
「姫、いや幹仁、何を言ってるんだ?」
「だから、俺なんかほっといていいから他の子守ってやれって言ってるの!」
自棄で一気に叫ぶと、琉賀はぽかんと口を開けて固まった。
「……は?」
「じゃあな」
目元に熱いものが込み上げてきて、俺は急いで背を向けると走り出す。
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