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「そんなの知ってるよ~、田辺幹仁くん。身長百六十八センチで、若干その微妙な身長が悩み。それからバストから順に……」
「うわあっ!やめろ!個人情報晒すな!お前が俺のことを知っているのは分かったから、そのどこから入手したか聞くのも怖い情報やめてくれ」
「慌てた顔も最高にキュート。ああ、今日も美しい俺の姫様」
「うわっ」
あちこちネジが緩んだ残念なイケメンは、うっとりした顔のまま抱き寄せてきた。
「何するんだ離れろ!」
残念なイケメンを必死に振り解こうとするが、効果なし。結構な力で叩いたり蹴ったりしてみるが、全く痛がる気配なし。
「ああもう、姫かわい過ぎる。そんな顔するとチューしたくなるじゃん」
「……!?」
もう言葉も出ない。最初は呆れていただけだったが、今は違う。イケメンが言葉通りのことをしたからだ。
「……っんぅ!?」
唇に押し当てられるだけだったそれは、やがて深いものに変わっていく。
「んんっ」
イケメンなのはいい。そして出会い方も、悪くはない。まるで少女漫画のような王道パターンで助けられ、出会い頭に唇を奪われる。もし俺が女だったら、いささか相手に難ありだが、それを除けば文句なしの展開に胸をときめかせているかもしれない。
しかし問題は、俺が男だということだ。それも、たった今奪われたのはファーストキスだった。そんなに大事に取っておいたわけではないが、流石に初めては女と、あわよくば美少女と、という夢が音を立てて壊れていく。
泣きたい気持ちで必死で抗ってみるのも空しく、全く叶わない。
「っんぅ!?」
しっとりと湿り気を帯びたそれに唇を舐めまわされ、驚きに思わず目を見開く。それは執拗に動き、口を開かせようとしてきた。
「……っく」
歯を食いしばってなんとかそれを免れていた俺だったが、あまりにしつこくて危うく根負けしそうになってしまった時だった。
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