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「っておい!ちょ、待て」
しかしあっという間に追い付かれ、捕まった。
「離せ!」
腕を振り払おうとすればするほど、逆に強く掴まれ、そのまま引き寄せられる。
「離せよ。俺はただの後輩の一人なんだろ?もう狙われる心配はなくなったし、ほっとけよ!」
俺は渾身の力を込めて突き放そうと努めるが、空しく思うほど効果はない。
「なあ幹仁、何か誤解してないか?」
耳朶にふわりとかかる琉賀の声に、俺は否が応にも顔に熱がこもってくるのを感じた。
「な……にがだよ」
強がって見せながらも、俺の鼓動は馬鹿みたいに高鳴る。いくらこの男にとって自分が守るべき後輩であって、それ以上でも以下でもないのだと言い聞かせても無駄だった。そして一度も好きだなどと直接的なことを言われたことがなかったという事実に思い当る。それなのに。
「好きだよ幹仁。後輩としてではなくて、恋愛対象として」
「う、嘘だ」
俺は思わず否定する。
「嘘じゃない」
真摯に目を見つめられながら言われ、ひるんでしまう。
「でも……」
なおも俺が信じられないでいると、琉賀は呆れたように溜息をついた。
「あのな、幹仁。俺はただの可愛い後輩だから守るわけじゃないの。お前だからだよ」
「俺、だから?本当に?」
「ほんと」
ほっと安堵した途端、体から力が抜ける。そんな俺を琉賀は笑いながら支え、しっかりと抱き締めた。
「幹仁は?俺のことどう思ってる?」
「好き……」
琉賀の腕の中で、速まる鼓動を感じながら言うと、琉賀は顎を持ち上げ、キスをしてくる。
「ん……」
「愛してる」
その言葉は自然と互いに囁かれ、熱く、深いキスとともに空気に溶けた。
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