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「……」  先ほどからやけに視線が痛い。  授業中だというのに、大半のクラスメイトの視線が俺に集まっている。それもこれも全てあのセクハラじじい、琉賀のせいだった。  俺は苛立ち紛れに頭を掻きむしりながら、先ほど起こったことを苦い気持ちで思い出していく。  それは、琉賀に抱き上げられたまま教室に着いた時に起こった。  ようやく琉賀の腕から下ろされて、ほっと安堵の息をついた俺。そして教室の扉を開けようと手を伸ばした時。  すっと誰かの手が伸びてきて、俺よりも先に開けてしまった。そのうえ、そいつはわざとらしく大きな音を立てて開けたため、ただでさえ授業中で静かな教室が一層静まり返った。  クラス中の視線が集まる中、そいつはいやに慣れた手つきで俺の腰に手を回すと、これ以上くっつけないほど体を密着させた。 「……っ!?」  俺はまさかと思ってそいつを見上げた。そいつは案の定、琉賀尚雪だった。  琉賀は俺より十センチかそれ以上高いため、少しだけ見上げることになる。それが更に俺の神経を逆撫でする。 「お前さっさと自分のクラスに行けよ!」 「まあ待て」  毛があったら全身逆立てていそうな状態の俺を、琉賀は軽く宥める。 「というか離せ」  密着させられている琉賀のしなやかな体から離れようと、俺は身を捩った。しかし、圧倒的な力の差からか、しっかりと腰に回された腕はびくともしない。
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