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それでも諦めずに離れようとする俺に、琉賀は、
「用が済んだら離してあげます。だから暴れないでください」
と、やたらバカ丁寧に囁いた。嫌な予感は消えなかったが、その用事とやらが済めば解放されるのだと思い直し、渋々暴れるのを止めた。
するとそのタイミングを見計らった琉賀が、俺の頬に口付ける。
「!!!」
口付けされた本人である俺は目を見開き、クラス中はざわめいた。
「……こういうことだから、幹仁には手を出すなよ?」
唖然とするクラスメイト。怒りに震える俺。
「じゃあな、幹仁。また後で」
そんな彼らに背を向け、ひらひらと手を振りながら上機嫌に去っていく琉賀。それと対照的に怒りに震える俺は、額に青筋を立てて、さらに目が据わっていた自覚がある。
「田辺、取りあえず席に……ひっ……」
なんとか気を取り直して俺に声をかけた教師だったが、そのあまりに恐ろしい形相に後ずさりした。
「こういうことって、どういうことだ!!」
授業中なのもお構いなしに、俺は今日で何度目かの絶叫をした。
しかし、それで済むならまだ良かった。これでも十二分に腹立たしいのだが、琉賀を何発か殴れば気が済むだろう。
だが、ことはこれだけでは済まなかった。
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