第6話 やんごとなき菊池の成績事情

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「知己! それは……! 私も、もう限界です。動きますよ、いいですか?」 「あ、ああああ! クロードぉ……っ!」  何かを堪えるような知己の切ない声に、反射的に 「一体、何、やってんだー?!」  門脇が声を荒げた。  準備室のドアノブに力を込める。 「先生ー!?」  門脇はドアを勢いよく開けた。 「あ! あああああー!」  その直後、更に大きな物音が続いた。 「だから、ドアを開けちゃダメって言ったのに……」  知己が恨めしそうに、押しドアを開けた門脇へ向かって言った。  その姿は、見るも無惨に埃を被り、あっちこっち擦り傷だらけだ。  準備室の床には、多くの鉱物や生物標本がごちゃごちゃと所狭しと散らばっていた。  全く状況が飲み込めず 「……先生達は、何をしてたんだ?」  門脇が呆然として聞く。 「クロードが、この棚に入っている標本が見たいと言いだしたんだ」  知己が、準備室ドア横の大きな棚を指して言う。  その棚は、標本収納のスライド式扉が付いているものだった。  それをクロードが知己が止めるのも聞かずに開けてしまったのが事の始まりらしい。 「なんだ? これ」  門脇が尋ねる。 「タイマイの甲羅。珍しい標本だろ?」  知己がレアものの標本を自慢げに答える。  大きなウミガメの甲羅がそこに落ちていた。     
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